【ミ三3研究レポート】 研究員S
きっかけは母が連れて行ってくれた地元の雑貨店でした。
福井県にあるその雑貨店は、店主の方が国内外の素材を使ってハンドメイドした商品や、店主の旦那さんが海外から買い付けてきた商品などが並ぶ、個性豊かなお店でした。
その中に、福井県鯖江市の代表的な産業である「メガネ」のフレーム素材をモチーフに使ったアクセサリーがあり、その中から1つのリングを選んで母に買ってもらいました。

【工芸への興味】
最初はなんとなくかわいいなという印象で選んだリングでしたが、素材も軽くて付け心地が良いので毎日のようにそのリングを着けていました。
パソコンを触る時やコーヒーカップを持つ時、自然と目に入る手にはいつもそのリングが着いていて、次第にリングのモチーフとなったメガネの素材に興味がいくように。
「なぜガラスのようにきれいなのに、こんなに軽いんだろう」という素材への興味から、「そういえば、なぜ鯖江のメガネは有名なのだろう」という所に疑問が移り、調べていくと…鯖江で世界初のチタンフレームのメガネ開発が成功したことや、200以上もの工程をそれぞれ専門の職人たちの手で分業してつくることで高い品質を維持していることを知ることができました。
伝統工芸のどこがすごいのかを理解しないまま何年も過ごしてきましたが、1つのアクセサリーとの出合いをきっかけに、地元への関心や理解を深めることになりました。
今まで田舎でパッとしない場所だと思っていた地元に、なんだか誇りが持てるように。そして同時に、今まで「自分には縁遠い」と思っていた工芸品がとても身近に、そしてかわいく感じられるようになったのです。
1冊の本との出合い
物事は引き合わせなのでしょうか。地元の工芸に興味を持ち始めたおり、1冊の本と出合いました。

読書好きな研究員Tが貸してくれたこの本には、東日本大震災を経験した福島の人々が、ものづくりを通して新たな仕事や居場所、地域や人とのつながりを生み出してきた数々のプロジェクトを取材した内容が載っています。福島の伝統工芸を活かしたものづくりも多く、そのなかで「女子の暮らしの研究所」のみなさまが行う「Fukushima Piece プロジェクト」の活動を知りました。
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【ふくいろピアス】
「Fukushima Piece プロジェクト」は、ふくしまの伝統に女子の「かわいい!」という感性をプラスして素敵なものをつくりだそうという気持ちから始まった活動で、会津漆器の技法を使ったアクセサリーや、1300年以上の歴史を持つ川俣シルクを使ったアクセサリーなどを、ふくしまの女の子たちがつくり上げてきました。その中でも私が気になったのは「ふくいろピアス」という、会津木綿をアクリルの中に閉じ込めてピアスにしたイヤーアクセサリーです。

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○△□の形に仕上げられた会津木綿のアクリルパーツは、ツヤんコロンと飴玉のようにかわいらしく、カラフルな色味も女子の心をくすぐります。縞模様を基調とした会津木綿は、古くからふだん着として親しまれてきた印象が私には強く、こんなにかわいいアクセサリーになるなんて...!と本に挿入された写真を見たときに感動しました。
「女子の暮らしの研究所」のみなさまが、ふくしまの伝統を自分たちの視点で見直したときに、「会津木綿はかわいいものにできる」と新たな価値を見出したことで、ふだんは届かなかった人にも会津木綿の存在が認知され、ふくしまの伝統や技術、そして暮らしを知ってもらえるきっかけをつくれたのだと思いました。

【てのひら工芸、スタート】
「1つの物事を別角度から見ると全く印象の違う話になる」ということがあるかと思いますが、それと同じで伝統工芸品を「今までと同じ」方向からみたら、どこか「高くて手に取りづらい」「今の生活の中では使わない」といった印象になる人もいるかと思います。しかし、あの雑貨店の店主やふくしまの女の子たちのように角度を変えて見てみたら、工芸品は私たちにとってまた違った存在になれるのではないかと思い始めました。
まず私が工芸品をかわいいと思ったポイントはどこだろう。共通点を探してみると、それは「てのひらサイズに小さい」というところでした。
「小さきものはみなうつくし」
という言葉を清少納言が残したように、1000年以上も前の平安時代から「小さいものはかわいい」という感覚が私たちの中には宿っています。てのひらの中に収まりそうなくらい小さいと、壊さないようにそっと愛でたり、無条件に守ってあげたくなったりしませんか。この気持ちを工芸品と組み合わせれば、違う角度から見ることを楽しめる商品になるのではないかと思ってスタートさせたのが「てのひら工芸」です。

【ちゃっこい めんこい あいぼう】
てのひら工芸第1弾は、ありがたいことに「女子の暮らしの研究所」のみなさまにご協力して頂き、会津木綿を使った3つのアクセサリーをつくることができました。
工芸品をただ眺めて飾るだけではなく、私たちの身近なところでいつも励ましてくれるような存在になってもらいたいという気持ちから、身に着けられるアクセサリーにおとしこみ、商品名に「あいぼう(相棒)」という言葉を入れました。
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リング、シュシュ、ネックレス。それぞれのアクセサリーには、ふくしまに暮らすみなさまの想いが込められています。ちゃっこくてめんこいあいぼうたちは、本型のパッケージにいれてお届けするのですが、そこに「女子の暮らしの研究所」のみなさまから頂いたメッセージを書かせて頂きました。本型のパッケージは3つ揃うと絵がつながるような仕様なので、毎月届く過程も楽しみながら、ふくしまの女の子たちと、そして会津木綿を織る職人さんたちと、「ふくしまのカケラ」を通してお話してくださいね。
【ミ三3研究室 研究員Sより】
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ちょっと出合う形が変わるだけで、興味がなかったものに関心が生まれる。なんにもないと思っていた場所が、すごく豊かな場所だったと気がつく。そんな場所で過ごした時間がすこし誇らしくなる。
故郷で過ごした時間は、いくつになっても自分という人間を形作る大切なアイデンティティになっていると感じる瞬間があります。また故郷を離れても、大切に思える場所が増えていくと、どこに行ってもその土地が味方でいてくれるような気持ちにもなります。
家族が待っている町、旅行で親切にしてもらえた町、まだ行ったことのない町……
自分が好きになる、そして他の人にも話したくなるような居場所でいっぱいにするために、てのひら工芸と出合う旅は続きます。
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P.S 次に帰省した際も母にあの雑貨店に連れて行ってもらい、今度は若狭パールを使ったアクセサリーをお迎えしました。パールも調べていくとおもしろいことがたくさんあったのですが、長くなってしまうのでまた別の機会にレポートを提出します。
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