ミ三3研究室

【ミ三3研究レポート】 研究員F

「大量にある本を少し減らしたいけれど、どれも好きな本だから大切に扱ってくれそうな古本屋さんに渡したいな。」と調べていて出合ったのが、古本の買取・販売を手掛けるオンライン書店『バリューブックス(以下VB)』。そして、深掘りするうちに、VBには毎日3万冊近い古本が届くものの、値段がつかず(つけられず)再販できなものが約半分もあるという事実を知りました。

大量にある本

【値段がつかない本の行方は?】

そもそも、「値段がつかない」とは。汚れているとか破れているとか。誰も興味がなさそうな本だから……とか?その理由、実は、本の状態だけではなく「需要と供給のバランス」だそう。たとえば、ベストセラー小説。大量に集まるものの多くの人が読んだゆえに、今から読みたい人が少なく売れない(から値段がつかない)とのこと。なるほど。ちょっと切ない。では、VBで毎日発生する「値段がつかない約1万5千冊もの古本」はどうなるのか?

古紙回収

そう、それらは古紙回収へまわり再生紙に。……悲しい気もするけれど、しかたない。しかし、日々大量の本が本としての意味を失っていくのを見ているうちに、VB内で生まれた「それは古紙リサイクルというひとつの完成された形であり、たしかに”循環”ではあるけれど……。」という思い。そしてそれは、やがて「なにか、自分たちにもできることはないだろうか」に。古紙回収に回すことが悪いことではない、けれど、もっと別の形で価値を生むことができないか。こうして、VBのユニークな再生紙プロジェクトが始まりました。

【本が持つ特別な価値を生かす】

集まった古本をすべてまとめて古紙回収に回す方が、手間もかからず合理的。しかしVBが始めたのは、古本を分別して再生紙を作ること。はじめに取り組んだのは、文庫本と新書だけの再生紙作り。そうして誕生した「本の再生紙」は小さなノートに仕立てられ、「ユニークなプロダクト(製品)」として多くの人の手元へ届けられました。ミ三3研究室の研究員Fもそのノートを手にしたひとりで、この出会いこそがVBの活動を追いかけ始めるきっかけとなりました。
その後さらに「漫画だった再生紙」「雑誌だった再生紙」も増え、「本の価値やその循環について考えるきっかけを生み出すことができれば」と始めたVBの取り組みは、「プロダクト」から「プロジェクト」へ大きく進化したと思うのです。(すごい!)

VBの取り組み

【バリューブックス × ミ三3研究室】

時に人生を左右するほど大きな力を持つ本は特別な存在。なのに、持ち主の手を離れたとたん、ただの紙になってしまうのはさびしい。VBに届いたものの、値段もつかない古本たち。しかしそれらは、本としては命を終えたけれど、特別な紙として新しいはじまりをむかえる。なんて素敵なんだ。

この再生紙の「ものがたり」に出合って以来、いつか一緒にお仕事がしたい……とチャンスをうかがっていた「ミ三3研究室の研究員F」は、研究室設立を機にVBさんにお声がけ。「本だった・漫画だった・雑誌だった」3種類の再生紙を使ったオリジナルアイテムを作成する、というコラボレーションが実現したのでした。

古本の分別

値段がつかなかった古本たちは分別され、「本だった・漫画だった・雑誌だった」それぞれの記憶のカケラが残しつつ、新しい価値を持つ特別な紙に生まれ変わり、ミ三3研究室によって楽しいアイテムに。「読みもの」から「紙もの」へ、そしてさらに「贈りもの」にも。文庫本カバーにしてみたり、プチギフトを包んだり、大切なメッセージを書き留めたり。この紙ものたちが、手にした方の暮らしにさまざまなインスピレーションを与えてくれますように。

「読みもの」から「紙もの」へ、そしてさらに「贈りもの」にも

【忘れちゃいけない マスキングテープのこと】

カモ井加工紙さんのマスキングテープ1

「紙もの」だけじゃない。こちらにもユニークな物語が。創業100周年を迎えた、カモ井加工紙さんのマスキングテープです。これから先の100年に向けて、先にいる誰かのためにしあわせを循環させる活動として、廃材を生かし新たな価値を生む「mt next 100 project」から誕生しました。
テープの素材はなんと、コーヒーフィルターの製造時に出る廃材から再生された古紙を70%使用したもの。味ありの質感とカラーがナイス。創業以来100年間、(培ってきた粘着技術で)くっついたりはなれたりしながら、みんなの暮らしに小さなしあわせをくれる……カモ井さんならではのプロダクトです。

カモ井加工紙さんのマスキングテープ2

【ミ三3研究室 研究員Fより】

研究員F

偶然出合った1冊の本が大切なことを教えてくれた。誰かを想って小さな贈りものを包んだり、手紙を書いたりする時間がしあわせ。お気に入りの時間のおともには大好きな珈琲が欠かせない。
本と紙と珈琲と。大切にしている小さな「好き」のまわりの世界を深掘りする楽しさをお届けしたいと思います。

想い描く人・作る人・使う人etc.……みんなでSocial Good!なものづくりやお買い物ができたら、しあわせな世界・社会だと思うのです。手にしたモノを通して、作り手側のさまざまな人たちの物語を知って・使って楽しんで・自分なりの社会との関わり方なんかも時々ちょっと考えてみる。そういう暮らしをしてゆきたいと思います。

ミ三3研究室イラスト