貴婦人と乙女心 Collection no.18

乙女心、なんてものは忘却の彼方。すっかり忘れ去っていた。このジュエリーボックスに出会うまでは。艶やかなエナメルの光沢、絵本の世界から出てきたようなモチーフ、キラキラと輝くラインストーン。そのすべてが、心の奥の乙女を目覚めさせた。「なんてロマンティック……！」。

そもそもがこのジュエリーボックス、中世ヨーロッパの貴婦人のピルケースを模したもの。コルセットでウエストを締め付けていた当時の貴婦人にとって、気分が悪くなったときの気付け薬は必需品。その気付け薬を入れるためのピルケースにも贅を尽くし、金細工や宝石などの装飾をほどこしたものを作らせたとか。夜ごと華やかなドレスを着て舞踏会に繰り出していた貴婦人たちが、美的センスや個性を競ったピルケース……とくれば、それはもう、乙女心をくすぐらないわけがない。

趣向を凝らしたピルケースをイメージした、アンティーク風のたたずまい。エナメルの光沢感やラインストーンのきらめきが美しく、ずしりと持ち重りする冷たい手ざわりも本格的。ジュエリーボックスと言いつつ容量は小さめなので、オブジェとして楽しむのがちょうどいい。ドレッサーに並べて飾れば、気分は現代の貴婦人。「あら、あの方のいちごのケース、素敵じゃなくて？」「まあ、そちらのうさぎも愛らしくてよ」なんて、脳内で舞踏会ごっこが始まってしまったり。結局かわいいものの前では、心は乙女に戻ってしまう、ってことかもしれない。